Y 邸 (1999年度 中部建築賞受賞)


(所在地)蒲郡市 (構造)木造2階建 (延面積)52坪 (総工費)3100万円
 
 この住宅は閑静な住宅地の中の、細い十字路の角に建っています。建物の主要な部分は木造ですが、境界いっぱいに建った道路側の壁は、防音や安全性のため鉄筋コンクリート造となっています。外観や内部空間に「和」と「モダニズム」という2つのイメージをダブらせたり、中庭や濡縁を作る事によって、外部と内部の境がアイマイになる様にしてあります。そこから、U邸と同じ様に何らかのフンイキが漂ってくればと思っています。
 この建物に使われている仕上材料についてお話してみましょう。まず、外部では、2階の木造部分が錆づらいメッキ鋼板で被われています。これは軒の出のないシンプルな形としたため、外壁に確かな防水性を期待したためです。ちなみに、南側は使い勝手を考え、1M程の軒が出ています。また、1階部分のコンクリート壁は昔の倉の壁の様に、発水性を高めた漆喰が塗ってあります。この漆喰は内部の壁にも使われています。スサやコテムラや骨材の砂が浮き出たその表情からは、無機的な白いペンキとは違う、遠い記憶を呼び起こす様な、なつかしいヌクモリを感じる事が出来ます。居間の天井は木の構造材をそのままあらわし、床は工事現場で使う杉の足場板を使っています。節まるけのこれらの材料は安価なばかりではなく、きれいな材料とはまた違った、味わいのある表情を室内に与えてくれます。これらの木には、自然な植物油の塗料が塗られています。壁の漆喰とともに、体にやさしい住環境を与えてくれます。
 すぐれたデザインは時代を超えて人々に感動を与えてくれます。しかし、現代のデザインがどれだけ時を超えていけるかを、今の時点で完全に見極める事は出来ません。ただ、時間とともに味わいの増す優れた材料が、時を超えていく事だけは確かです。